アルコールチェッカーの数値の意味とは?
ドライバーの飲酒の有無をチェックするアルコールチェッカー。機器に息をふきけかけることで、ドライバーが酒気帯びかどうか判定することができます。
アルコール成分の含有量は数値で表示されますが、表される単位などになじみが少ないため、適切に判断するためにも、まずは使用方法や数値の意味を正しく把握することが大切です。
合わせて、検知器の種類や記録用のアプリについても知識を拡げることで、社内の検査環境がより充実したものになるでしょう。
アルコールチェッカーの数値は何を意味する?
アルコールの摂取は、身体の運動機能を低下させ、判断力にも影響を及ぼします。「少しなら大丈夫」と思っても、自覚がないうちに身体の機能が低下している場合があるので、たとえ少量であっても飲酒しての運転はたいへん危険です。
とはいえ、どのくらいの量を飲めば基準を超えて飲酒運転とみなされてしまうのか、案外知らない人も多いもの。まずは数値にまつわる基本を押さえていきましょう。
呼気中のアルコール濃度を測定
呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールチェッカー。数値は、「mg/L」または「ppm」で表示されます。呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mgの場合、「0.15mg/L 」と表します。
ppmは、「parts per million(パーツ・パー・ミリオン)」の略で、濃度を表す単位です。
酒気帯び運転の基準値は0.15mg/L以上
酒気帯び運転とは、「呼気に含まれるアルコール濃度の数値が呼気中1リットルに対して0.15㎎以上の状態」です。見た目に酔っているように見えなくても、呼気にアルコール成分が0.15㎎以上0.25㎎未満含まれていれば“酒気帯び”と判定されます。この状態で運転した場合、道路交通法違反により罰せられます。
アルコールチェッカーの種類と使い方
飲酒に関する検査の仕方は複数あります。呼気で測るものがもっとも手軽ですが、唾液や血液検査でも計測できます。
検査の種類
呼気検査はアルコールの有無を手軽に判定でき、一般的に広く使用されています。機器に呼気を吹きかけることでアルコール濃度を測定します。
唾液検査は、専用のキットに唾液を含ませ判定。非接触で衛生的な検査法です。医療機関などで血液を採取する血液検査は、最も正確な数値が判定できます。
アルコールチェッカーの使い方
機器の種類には、検知器に呼気を吹きかけるものや、ストローに息を吹き込むもの、マウスピース式のもなどいくつかタイプがあります。正しく検査するためにも、機器の指示に従って正確に操作しましょう。
測定前には、真水でうがいしておくのがよいでしょう。飲食直後では、口内に残った成分が機器のセンサーに影響を与える可能性もあり、正しい測定ができない場合があります。
測定が終わったら、接触部分の唾液をふき取るなどして清潔に保ちましょう(機器の取り扱い方法に従ってください)。正確なデータを取得するためにも、正しいメンテナンスが大切です。
アルコールチェッカーの数値を正しく計測するには
アルコールチェッカーの数値を正確に得るためには、定期的なキャリブレーションが欠かせません。
キャリブレーションとは、検知器の値に偏りがないか計測したり、正しい値になるよう調整したりすること。測定機器などを使って、アルコール検知器が正確な数値を計測しているか、定期的に診断します。
キャリブレーションの手順
アルコール検知器は、使用していると劣化が進んで計測の判定が不安定になったり、不具合が生じたりすることも考えられます。
適切に使いつづけるためには、自己判断ではなく、製造元の提供する取扱説明書に従って進めることが大切です。
アルコールチェッカーなどの保守点検も、飲酒チェックを取り仕切る安全運転管理者の業務の一つです。定期的な実施を心がけましょう。
警察庁H.P:アルコール検知器を用いた酒気帯び確認等に係るQ&A
数値を確実に測定するための注意事項
・飲食直後の測定は避ける
アルコールチェッカーのセンサーは、ごくまれにアルコール以外に反応することがあります。飲食直後はとくに影響を受けやすいので注意が必要です。
アルコール分を含む食品や食品添加物、口腔洗浄液などは反応しやすいものの一つです。
・空腹・満腹、喫煙、服用薬の影響も考慮
空腹時や満腹時に、体内で発生するガスなどに反応する場合もあります。また、タバコや服用した薬の成分に反応する場合もあるので注意が必要です。
・飲んでから時間が経っても、体内に残っていることも
「飲んだのは昨夜だから、もう抜けている思う」。そんな自己判断で翌朝運転して、飲酒運転で捕まるといった事例が少なくありません。アルコールが体内で分解され、排出するまでの時間は、飲んだ量や種類、体質などの個人差が大きく影響するため、乗車する日の前から飲酒の量を控えるなど、個々で調整する必要があります。
日々の数値を効率よく保存するデータ管理法
アルコールチェックでは、以下の8項目を記録する必要があります。記録は1年間保存することが法令で定められていますので、コンプライアンスの観点からも、記録の残し方や保管方法はしっかりと整備し社内で共有しておく方がよいでしょう。
• 運転者名
• 運転者の業務に係る自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
• 確認の日時
• 確認の方法
•アルコール検知器の使用の有無
•対面でない場合は具体的方法(カメラ・スマートフォンなど)も記載
• 酒気帯びの有無
• 指示事項
• その他必要な事項
管理方法は紙やパソコンの他、アプリも便利
検査結果の記録は、紙やパソコンなら、記録簿などを作って項目ごとに記入していきます。
最近では、アルコールチェックの記録用アプリも開発されています。いつでも手軽に入力でき、記録も自動保存できるので保管漏れがなく安心です。
アルコールチェックの一連の業務を外部委託できる「アルコールチェック代行サービス」も便利です。飲酒の有無のチェックから、記録の保存、管理までまるごとまかせられ、法令順守の観点からも安心です。
参考ブログ:アルコールチェック代行サービス
データは定期的にチェック
ドライバーのアルコールチェックは、安全運転管理者による確認が必須となっています。保存されているデータは、異常や記録漏れなどがないか定期的にチェックするようにしましょう。
数値の意味を正しく理解するためのポイント
基準値はあくまでも目安
アルコールチェッカーで示される数値は、あくまでも目安です。アルコールの作用は個人差が大きく、人によってはわずかな成分でも身体に影響をおよぼす可能性があります。
安全運転のためには、数値が基準値以下であっても飲酒運転はぜったいに避けなければいけないと改めて認識し、自社のドライバーへの周知と正しい理解を求めることが必要です。アルコールチェッカーの正しい操作方法も理解してもらい、誤測定を防ぐようにしましょう。
数値が基準値を超えた場合の対応
乗車前のアルコールチェックで基準値以上の数値が出たら、ドライバーは安全運転管理者に速やかに報告し、運転を控えなければなりません。乗車後のチェックでアルコールを検知した場合は、酒気帯び運転や酒酔い運転とみなされる可能性があります。
事業所内で違反があった場合、運転者だけでなく、経営者や安全運転管理者などにも罰則が課せられる可能性があります。
社員の中に、飲酒の頻度が過度に多い人や、基準値以上の数値が頻繁に出たりする人がいるようなら、面談などで事情を把握し、アルコール依存などの可能性も考慮する必要があります。状況に応じて、医師の診察を受けるといった対処が必要かもしれません。
参照:飲酒と事故 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
アルコールチェッカーの選び方のポイント
アルコールチェッカーには、呼気中のアルコール濃度を判別する「センサー」が内蔵されており、「半導体式ガスセンサー」や「電気化学式(燃料電池式)センサー」などがあります。見た目に大きな違いはありませんが、前者は比較的安価で、後者は価格が上がりますが精度が高いといわれています。
検知結果をスピーディに確認できるものや、測定にはやや時間がかかるものの精度の高い結果が得られる機種など、それぞれメリットやデメリットがあります。自社で求める機能に合わせて使いやすいものを選ぶのがよいでしょう。
直行直帰が多い職場で、アルコールチェッカーをドライバーに携行させたい、などといった場合は小型で操作方法が簡易なものがよいかもしれません。
アルコールチェッカーの正しい使い方と注意点
まずは、取扱説明書をよく読んで正しく使用することが大切です。測定前に口内を清潔にしおくとセンサーの誤反応が起こりにくくなり、使用後に機器を清潔に保つことで劣化の進行を遅らせることができます。
検知器の管理も安全運転管理者の業務の一つです。定期的にメンテナンスし、いつでも正しい測定ができるよう整備しておきましょう。
まとめ
アルコールチェッカーは、安全運転と法令遵守を果たすための重要なアイテムです。測定方法や価格などさまざまなタイプがあるので、自社で最も使いやすいものを選ぶのが、システムを構築し長く定着させる上で重要かもしれません。
本記事を参考に、アルコールチェッカーの数値に関する知識を深め、社内整備を進めながら適切な対策を講じることをおすすめします。