アルコール検知器のごまかしは絶対に許されない!安全運転と法令遵守のために

アルコール検知器のごまかしは絶対ダメ。罰則の有無と不正の予防策を解説。

近年、飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たず、社会問題となっています。こうした状況を受け、2022 年 12 月 1 日より、すべての企業にアルコールチェックが義務づけられました。
営業車を運転するドライバーや安全運転管理者にとって、アルコール検知器は安全を守るための重要なツールです。しかし、もし「ごまかしても大丈夫なのでは?」「すり抜ける方法があるのでは?」と考える人が社内にいれば、それは危険なことです。
アルコール検知器のごまかしは絶対に許されない行為です。
本記事では、アルコール検知器のごまかしによって生じる処罰・罰則や、不正行為を防ぐための具体的な対策をご紹介します。

アルコール検知器の重要性

アルコール検知器は、主に3 つの重要な役割を果たします。

運転者の健康と安全を守る

乗車前に飲酒の有無をチェックすることで事故を未然に防ぎ、人命を守るという目的があります。
同時に、運転者の健康状態を把握し、リスクを回避するという役割もあります。基準値を超える数値が常態的に検知されている社員がいたりすれば、速やかに把握でき、医療機関に相談するなどの対処も取りやすくなります。

参照:厚生労働省H.P:アルコール健康障害対策

交通事故の予防につながる

そもそもアルコールチェック義務化は、飲酒運転の防止を目的に施行されたもの。乗車前のチェックを習慣化させることで、飲酒運転による悲惨な事故予を防できるようになります。
また、社員一人ひとりに安全運転に対する意識を定着させさせることにもつながります。

参照:警察庁H.P:飲酒運転による死亡事故件数の推移

法的な義務と罰則

安全運転管理者の基本業務であるアルコールチェック。これを実施しなかった場合に対して、現在のところ個別の罰則は設けられていませんが、安全運転管理者の選任義務違反などが適用される可能性もあり、処罰されないと解釈するのは適切ではありません。
もちろん、アルコールチェックで不正をはたらき飲酒運転をしてしまった場合、「酒気帯び運転」や「酒酔い運転」で処罰されます。
それがドライバー側の不正だったとしても、雇用している企業や経営者側の責任は問われでしょうし、最悪の場合、事業停止処分となることも考えられます。

出典:警察庁H.P:安全運転管理者の業務の拡充等

アルコール検知器のごまかしは危険

アルコール検知器のごまかしは、ドライバーや市民の安全を脅かすだけでなく、企業や事業者にとっても重大なリスクを伴います。

安全運転に対する責任感の欠如

安全運転を遂行するためには、ハンドルを握るすべての人が自覚と認識をしっかりともつことが不可欠です。「これくらい大丈夫だろう」というちょっとした油断やごまかそうとする甘い認識から重大な事故が引き起こされる可能性もあります。

後遺症や人身事故のリスク

飲酒運転による事故は、人命を脅かす可能性が少なくありません。死亡事故は後を絶たず、たとえ命を救えたとしても、被害者に重大な後遺症を残すかもしれません。
加害者側は多額の損害賠償責任を負う可能性もあり、双方がたいへん辛い思いをすることになるでしょう。

罰則の厳しさを理解する

アルコール検知器をごまかして、飲酒運転や酒気帯び運転で捕まった場合、厳しい罰則が科せられます
また、いずれも免許停止処分になり、一定期間ハンドルを握ることができなくなります。
自社のドライバーが業務中に飲酒運転等で捕まった場合、企業やアルコールチェックを管理する安全運転管理者も、「車両提供罪」として運転者と同じ処罰を受ける場合があります。

出典:警察庁H.P:飲酒運転の罰則等

不正行為を防ぐための対策

アルコール検知器のごまかしを防ぐためには、以下の対策が有効です。

日頃の教育と啓発がだいじ

どんなに性能のよい検知器を用いても、ごまかそうとする意識をはたらかせる人がいれば、抜け道を塞ぎきることは難しいでしょう。
まずは、一人ひとりが「飲酒運転は絶対にだめ」という意識を高めることが大切です。
日頃からアルコールチェックの重要性と不正行為の危険性を周知し、飲酒運転を未然に防ぐことで、大切な社員を事故などの危険から守りたい、という思いをダイレクトに伝えることも意識したいものです。

内部監査と厳格な管理体制

企業内での不正を防ぐには、内部監査を実施することも有効です。企業内に独立した監査組織を設け、不正がないか定期的に調査・評価します。
記録管理を徹底させることも大切です。検知器で正確な数値が出ても、記録の部分で曖昧になってしまうと正しい管理ができません。管理体制をしっかり構築することで、不正行為が予防できたり異常を発見しやすくなったりします。

信頼できる検知器を選ぶ

正確な数値を得るためには、精度の高い検知器を選ぶことも大切です。
アルコールチェックは義務化されていますが、機種は特に指定されておらず、呼気のアルコールを検知し、濃度を数値や警告音で知らせる機能があればよいとなっています。
ただ、機種によってはアルコール以外に反応しやすかったり、測定が不安定になったりするものもありますので、検知器の性能を見極めながら、かつ自社で使い勝手のよいものを選ぶのがよいでしょう。
最近では、測定結果がクラウドへ自動送信できるものや、顔写真や位置情報など本人が検知した証拠が残るものなど便利なものも開発されています。
性能が高くても正しい使用方法を守っていなければ、正確なデータを得ることはできません。取扱説明書に従って使用法を守り、定期的にメンテナンスすることも忘れないようにましょう。

参照:アルコール検知器を用いた酒気帯び確認等に係るQ&A

事例から学ぶ不正防止策

過去には、実際にアルコール検知器の不正行為が発覚しています。ここでは、その事例をいくつかピックアップします。

実際にあった不正行為の事例4 つ

•水を口に含んで検査を受ける
• 呼気をわざと弱く出す
• 他人の呼気を吹きかける
• 改造された検知器を使用

これらの行為はすべて違法行為です。

運転業界での不正防止事例

貸し切りバス業界では安全性を向上させるため、アルコール検知器を用いた運転者の酒気帯びの有無について確認する際は、点呼記録の録画やアルコール検査を行っている状況の写真を撮影して、デジタルデータで90日間保管することを義務付けています。

参照:国土交通省H.P:貸し切りバスの安全性向上に向けた対策のための制度改正

タクシー会社によっては、抜き打ちでアルコールチェックするところもあります。社内でそうした緊張感を醸成させることも予防策の一つになるでしょう。

アルコール検知器の不正使用による逮捕事例

アルコール検知器の不正使用によって飲酒が発覚し、処分にいたったケースもあります。これまで、電動ポンプを使って検知器に空気を吹き込んだり、同僚や部下に身代わりをたのんだりといった不正が発覚しています。
最近では、日本郵政グループ会社で不正が発覚。検知器にはカメラが付いていて“なりすまし”を防ぐ措置も取られていましたが、画面には自分の顔を映しながら、別の社員が長いチューブを使って画面に映り込まないようにしながら息を吹き込んでいたということです。

参照:JPロジスティクス 別の社員にアルコール検査受けさせる不正|NHK 関西

不正行為は社会的信頼の失墜に直結します。社員一人ひとりにことの深刻さを理解してもらい、社内全体で不正の防止に努めることが重要です。

まとめ:ごまかしによるリスクは多大。企業の管理責任も大

アルコールチェックに関わらず、不正というものは、一度、二度と回数が進んでいけば、そのうち常態化してしまう危険性があります。「これくらい大丈夫」といった緩んだ空気が少しずつ蔓延していけば、社内全体で安全運転に対する意識が低下し、果ては重大な事故につながりかねません
飲酒運転による事故は、被害者はもとより加害者になってしまう自社の社員やその家族もつらい思いをすることになります。
そうした事態を未然に防ぐためにも、企業や事業者側で管理体制をしっかり構築することが大切。その上で、罰則や法令順守という観点で不正を防ぐだけでなく、何のためにアルコールチェックが必要なのか、「安全を守るために」という、その基本の意識を日頃から管理者、ドライバー双方で共有しておくことが大切です